With a smile
3度目に見た時、あの人は、泣いていた。


夏休みも残り少なくなった8月中旬、私はバイトに遅刻しそうになり、近道の為に公園を突っ切った。

1時までに行かないとまた怒られるっ。

息を切らして走っていると、ベンチに座った人が私の方へ顔を上げ、目が合った。

頭が理解するより先に心臓がドクンと音をたてた。

あの人だった。

一瞬私を見てすぐに下を向いた。

私はバイトの事なんて頭からすっかり無くなって、少し離れたベンチに腰を下ろした。

ベンチの半分より少し左に寄った所に背中を丸めて一人で座り、じっと地面を見つめている姿は、ずいぶん小さく見える。

赤くはれた目から涙は出ていないけれど、その顔も背中も腕も足からも悲しみがあふれている。

全身で泣いていた。

私も泣きたい気持ちになりながらずっと見つめた。

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