With a smile
ひざの上で組まれた両手が時折、祈るようにぐっと握られ、その度に胸が締め付けられた。

何時間かたった頃気付いた。

あの人は、誰かが近づくとフッと顔を上げて見る。

そしてすぐにまた元の体勢に戻る。

それをくり返すたびに、その背中は丸く縮こまり、悲しみが深くなっているのが分かった。

誰かを待っているんだ。

彼女?

あの時の女の子?

泣いているのは彼女と何かあったから・・・?

一人分空いた右側は彼女の為の場所?

彼女が来ないことは私にも分かった。

後姿しか知らない彼女、あなたがあの人にあんな顔をさせているならば私は憎い。

あなたが来ない事を分かっていても、ベンチから離れられないで泣いている。

あの人から笑顔を奪ったあなたが許せないと思った。

彼女がいると知ったあの日よりもずっとずっと悲しくて切なくて、暗くなり始めた頃私はそっとその場を去った。

あの人がそこにいつまでいたかは分からない。


今、あの人は笑っているだろうか?


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