Taste of Love【完】
「わ、わかりました。仰せのとおりに」

風香は観念して、立ち上がりかけた大悟の腕をつかんですがるように見つめる。

「まぁお前に損な話じゃないだろう。俺がお前の舌の代わりをしてやる」

(別に頼んでないけど)

心の中で悪態をつく。

「それとお前のスイーツ嫌いも直してやる。もともと食べられたものが食べられなくなったんだろう?俺の作ったケーキ拒否するなんてありえない」

(結局そこ?)

風香が何気なくケーキを拒否したことが、ここまで彼のプライドを傷つけたのか。

風香は「口は禍の元」を身をもって実感していた。

「ありがたいだろう?ぶー子」

指で風香の額をつつく。完全におもちゃ扱いだ。

「別にそんなこと頼んで……」

「え?バラしてもいいの?」

「いえ、浅見先生にお菓子を作っていただけるなんて光栄です!」

風香のセリフに満足した大悟は「まずはゆっくり休めよ」と言い残して医務室を後にした。

(あんな爆弾おとされて、ゆっくり休めるわけないじゃない!)

頭まで布団をかぶって頭の中の整理に努めた。
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