きっと上手くいく
愛情


 
 「最近、雰囲気が変わりましたね」

終業時間になり
机の上を片付けていたら
同じ課の女の子の声が聞こえ

最初
僕の事とは思わなかった。

「えーっと、こざっぱりしたというのか……」

「それは失礼じゃない?」

「じゃ、若くなったというか……」

「それも失礼だよ」

クスクスと僕を見て女の子達が笑うので
僕もそこでやっと自分の話と気づき顔を上げると

「悪い意味じゃないですよ」
「そうそう。前より明るくなったのでいい方向です」

楽しそうにそう言い
「お先に―」って逃げるように目の前から消えてしまった。

こざっぱりした……若くなった……。

昔のネガティブ思考の僕ならば
そう言われると『前はそんなに汚かった?老けてた?』って思ったけど、今の僕は『それはよかった』って喜ぶようにしている。

あの日
山岸さんに言われ
心の奥がズーンときたんだ。

僕は全て人のせいにしていた。
イジイジしていて
ひがみっぽくて
性格が曲がっていて
すぐスネて

とにかく嫌なヤツだった。

人間急には変われない。
環境だって変わらない。

けど
少しずつ
自分の中で何かが変われる気がした。

こんな僕の小さな決意だけれど
いや……たぶん
世の中そんなに甘くないから
挫折するかもしれないけれど

山岸さんに言われて
心の奥がズーンとくるならば
僕にもまだ頑張れる気持ちがあるんだなぁって素直に思ったんだ。
< 52 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop