何度でも、伝える愛の言葉。

信じる気持ち


【樹季 Side】


バンドの全てを懸けて挑んだオーディションが終わった。

結果はグランプリどころか観客の投票によって決められる特別賞にも引っかからない惨敗だった。


ライブで手応えを感じていただけにこの結果はバンドに大きなダメージを与えた。

とくに悠人は灯里ちゃんと再会した前で結果を残せずかなり悔しがっていたし、受験もせず音楽を続けると決めている俺や悟や誠太に危機感を抱かせた。


そんな中で唯一の光明は、ライブハウスのオーナーから澪を褒められたことだと思う。



『あのキーボードの子うまいね。良い感性してる。』


結果を受けて肩を落とす俺にオーナーが言ってくれた言葉。


メンバーを褒められるということは、どんな状況に居ても嬉しいものだ。



『じゃあこの後またスタジオで。』


喜怒哀楽、様々な感情が渦巻き騒がしい楽屋の隅で悠人が言う。

それぞれ一旦自宅へ戻り、その後スタジオで今日の反省会をすることになった。


俺は騒がしい楽屋で所在なく立っている澪の手を取り外へ出た。

外は陽が落ちて夜が始まろうとしている。

表情が良く見えない夜の暗闇は、隠そうとしても落胆を隠せない俺の味方をしてくれているようにも思えた。



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