何度でも、伝える愛の言葉。

「あ〜あ、ここまで何もないとは思わなかったなー。」


何も話さない澪が気を遣ってくれているように思えて明るい声を出したけれど、無理をしていることがバレバレだった。



「誠太もせっかく彼女見に来てたのにな〜。てか悠人に気遣ってそのこと言わないとかあいつも成長したよな!」


それでもこの空気を変えたくて話し続ける。

完全に空回りだ。



『優勝したバンドと私たち、何が違ったんだろう。』


しばらくの沈黙の後、まるで俺の言葉が聞こえていなかったように澪がポツリと零した。

グランプリを獲ったバンドはスリーピースのロックバンドで、ストレートと言うよりは少し捻った、創造性のある歌を歌っていた。

技術的には負けていなかったと思う。

思うけど…



『何かが足りなかったんだろうね。』


何も言えなかった。

その“何か”をこれから探さなければいけない。


そのとき、なぜか早坂さんの顔が浮かんだ。

俺たちバンドとしてはまだまだ何かが足りない。

それでも澪だけは褒められたことを、早坂さんに伝えたかった。

きっと喜ぶだろうなと思いながら、澪の手をぎゅっと握る。



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