何度でも、伝える愛の言葉。

悟と澪が通う通信コースは土曜日が登校日だ。
つまり月曜から金曜に登校している俺たちは澪に出会う機会がなかった。

悟は作曲を勉強したいと平日は音楽スクールに通っていて、そのスクールの先生にキーボードのサポートを探していることを相談したところ、澪を勧めてくれたそうだ。

会ったことはないけれど、先生の勧めなら実力は間違いないだろうと俺たちも賛成した。


そして数日後、“日々野澪”という名前と同じ高校の後輩とだけ聞いていた悟は『お前ら!俺を褒めろ!』と上から目線で澪と出会ったことを報告してきた。

『マジで可愛いから!サポートじゃ勿体無いわ!メンバーにした方が良いって!』

…と、興奮気味に言ったは良いが、悟は澪に話しかけることができなかったらしい。



『ちょっと話しかけにくいんだよ。なんか…近寄らないでオーラというか…人を信用してない目してたから。』


この言葉の意味を俺たちが理解したのは、その翌週。

メンバー全員で土曜日の学校に行き、悟が澪を見た中庭で澪が来るのを待った。


人を信用していない目?

気さくな悟が声をかけられなかった澪のことを、俺はイメージできずにいた。

もしかしたら、かなりギャルとか…?

想像が変な方向へ向き始めたとき、悟が『あっ』と声をあげた。

その声につられ、俺たちも悟の視線の先を辿る。



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