何度でも、伝える愛の言葉。

加入当初のような不安だらけな毎日はもう消えて、バンドはとても楽しかった。

きっとこのメンバーだからそう思えるのだろう。


だけど、ひとつだけ引っかかっていることがあった。

初めてメンバーに会ったあの日、悟くんは言った。

私を誘ったのは、早坂先生に勧められたからだと。


その名前に私が敏感に反応したことを、皆は気付いただろうか。

何もなかったかのようにその名前を聞き流せない自分が情けなくて、今でも胸が疼く。


早坂先生は、どうして私を…?



『澪?』

「あっごめん、なに?」


そんなことをボーッと考えていたから、樹季くんの声に気付けなかった。


今日はメンバー勢揃いで練習だ。

私が仕上げた歌詞を、皆に見てもらうことになっている。



『なんか考え事でもしてた?』

「ううん、なんでもないよ。」


その言葉に、樹季くんは用があったわけではなくて心配して声をかけてくれたのだと気付いた。



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