何度でも、伝える愛の言葉。

レッスンを終えて帰る途中、教室に忘れ物をしたことに気付いた。

スクールが閉まる前に取りに行かなければと慌てて戻ると、さっきまでいた教室にはまだ灯りが点いていた。


あれ?
さっき先生が消してたはずだけど…。

少し不審に思いながら教室のドアを少し開けると、中からギターの音が聞こえてきた。


…どうして?


そこには、ついこの間講師として勤務し始めたばかりの早坂先生が居た。

こちらに背を向けてギターを弾いている。

どうしよう、入り辛い…。



『あれ?』


今日は諦めて帰ろうかと思ったとき、先生がふとこちらを見た。



「あ、あの…忘れ物しちゃって。」

『そうなんだ、入りなよ。』

「はい、失礼します。」


音が途切れ、静まりかえった教室。

なんとなく気まずくてすぐに帰ろうと思ったけれど、先生のギターを見て思わず足を止めてしまった。



「綺麗…。」

『え?』


元々はシンプルな、普通のアコースティックギターだったのだろう。

そこにオレンジや黄色、赤や白などのカラフルなペイントが施されている。



『あ、これ?すごいっしょ。』


私の目線に気付いたのか、先生がギターを少し持ち上げる。



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