白い羽根とシャッター音
目が覚めた時には、私はベッドの上に横になっていた。
…彼の部屋だ。
窓の外は暗くなっており、もう夜だと気付く。
あの丘から、彼が運んできてくれたのだろう。
ベッドから、左側の壁を見上げる。
あの桜の木の写真が目に写る。
何度見ても儚いあの桜の花びらは、なんだか私と重なって見えた。
私もあの花びらのように…………
その時、ガチャッと扉の開く音がした。
「あ…」
彼だった。
私は、思わず声を漏らした後、彼から目を背ける。
「起きた?」
「う、うん…。なんかその…ごめんなさい」
彼の方を見ずにそう言うと、彼がベッド脇に座ったのがわかった。
「倒れた時は驚いた。なんか、熱があるのかもしれない」
熱?
熱なんて…そんな。
死神の私が?
そこでハッと気付く。
死神としての本能が、
彼を助けようとするその気持ちを、律しようとしてるんじゃないかって。
警告にも似た、その体の変化。
そして、熱だけじゃない。
「あと、羽根…」
彼の困惑した声音が聞こえてくる。
本来、羽根が邪魔で仰向けに寝ることなんてあり得ない状況だ。
つまり。
今私の背中には、あの白い羽根がないということ。