時の彼方に君がいた
♤♧




七月、上旬。朝。


16歳と17歳の子どもたちが集う


二年七組の教室。


新学期が始まって


早くも三ヶ月がたとうとしていた。


「おはよう、翼。あと三分でチャイム鳴るんだけど」


「………学校始まるのが早いんだよ」


友人のからかうような声に


僕は笑って返した。


「五分早く起きればいいでしょ」


中学からの付き合いである笹原 小雪が


爪の手入れをしながら


さして興味なさげにツっこむ。


僕は机の横にかばんを掛けながら


友人たちに舌をだして見せた。


「五分あったら本読むもん」


小雪ともう一人の友人が顔を見合わせる。


「……活字中毒、もう少しましにならないの」


小雪が呆れたように言った。


「うーん、なんないや」


僕は自分の頭をわしゃわしゃしながら


笑った。


椅子に腰かけると同時に


チャイムが鳴った。


担任が教室に入ってくると


友人たちは自分の席へと戻っていった。


HRが始まる。


僕は両頬に手を添えて


出席をとる担任に


ぼんやりとした視線を送った。
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