box of chocolates
18の頃
『私の家はケーキやさんで、お父さんは、ケーキを作る職人です。お父さんは、ケーキ作りの大会で賞をもらったこともあるから、お店にはたくさんの人が買いに来てくれます。私もお父さんみたいに上手に作れるケーキやさんになりたいです』

 これは、私が小学生の頃に書いた作文。高校を卒業した私は、この頃から夢見ていたパティシエを目指す為、製菓専門学校に入学した。
 入学式の日は、とても風が強かった。せっかく咲いた桜が、一日で葉桜になってしまうのではないかと思うほどだった。

 公園の桜のアーチをぬけると、道路を隔ててすぐに学校があった。学校に向かい歩いていると、ひとりの男性がいちばん大きな桜の木の下で、散り急ぐ桜を眺めていた。
 通りすがりにチラッと男性を見た。男性にしては髪は少し長めで、彫刻のように彫りの深いその横顔は、一度見たら忘れられない顔をしていた。
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