box of chocolates
「お疲れ様。初めてのミーティングは、どうだった?」
 初めて定期ミーティングに参加した夜、八潮さんが声をかけてくれた。八潮さんは、学生アルバイトを含むすべての従業員に丁寧な口調で話をしていた。何かトラブルが発生しても、怒鳴ったりすることなく、常に冷静な対応をしていた。暖簾分けで、若くして店を持ったために、従業員の中には歳上の人間も何人かいたけれど、偉そうにすることもなく、年長者の意見を取り入れ、店の発展に全力を注いでいる感じがした。
「先輩方の技術を肌で感じて、勉強できる場があるのはありがたいことです」
「それは良かった。もし修行や将来のことで悩みとかあれば話してね」
「はい」
 八潮さんは、個人ミーティングも行い、仕事に関する悩み解決のサポートなど、メンタル面のケアも心がけていた。私は、今のところは相談することはないけれど、見習いパティシエが、閉店後の店内で八潮さんと話をしている姿を何度となく目にしていた。従業員のほとんどから、容姿だけではなく、仕事に取り組む真摯な態度に好感をもたれているに違いなかった。



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