box of chocolates
初めての恋
 ダンデライオンは、二号店をオープンさせる予定があり、良い場所を探していた。その候補地がうちの隣の駅ということもあり、八潮さんは、月に一度は必ずうちの店に顔を出した。そして、そのたびになぜか晩ご飯を食べて帰った。いつの間にかそれが当たり前になり、八潮さんが来ることを楽しみにしている自分がいた。容姿端麗、ユーモアたっぷり、そして何よりもパティシエとしての腕が素晴らしい。細く長い指先で作られるお菓子たち。味だけではなく、見た目も女性のハートをくすぐるものであった。


 太陽とひまわりが似合う季節になると、八潮さんへの憧れが恋に変わっていた。自分みたいな子どもには、つりあわない男性だとわかっていたけれど、その魅力にどんどんと惹かれていった。少しでも綺麗な女性になりたいと、エステやヨガに通い始めた。
< 5 / 184 >

この作品をシェア

pagetop