box of chocolates
 約束の日は月曜日で、店は定休日。両親は、午後から出かける予定があった。私は、十五時に地元の駅で戸田さんと待ち合わせをしていた。時間が近づくと、かわいらしい軽自動車でやってきた戸田さん。イメージ通りで、つい頬を緩ませながら助手席に座った。

「お待たせしました。まだ時間はあるけれど、どうしますか?」
「うちに来てください。ケーキをごちそうしますよ」
「え? 本当にいいんですか?」
 驚く戸田さんの隣で、カーナビを操作する。行き先は、蒲公英。
「はい。うちの店に設定しました」
 戸田さんの軽自動車が走り出した。駅からそう遠くはないので、話す間もなく到着した。店の鍵を開けて戸田さんを招き入れた。そして、すぐに定休日の札をかけ直した。ふたりっきりの店内。
すぐにうちの人気商品であるガトーショコラと紅茶を用意した。
「すみません。定休日なのに」
 恐縮する戸田さんに、食べるよう勧めた。
「美味しい」
 そのひと言が私を笑顔にさせた。ガトーショコラを口にすると、ほろ苦い甘さに、ほんわりと温かさがプラスされ、いつもよりもさらに美味しく感じた。

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