お伽噺を紡ぐふたり
諦めることが、得意だった。
エクリエア王国、ハリエラ市街の、地下にはワケありのものたちが集まる。そこでは奴隷の売買が行われていた。見ているのは、街に住む商人、働きに出てきた田舎者、反対に地主や、爵位を与えられた貴族までいる。

「おい、ちんたら歩くな、クソが!早く台の上にたて!」
「わかってます…」

奴隷商の男に追いたてられて、少女は台の上にたった。
焦らすように少女は素肌を隠していた布を落とした。
白い雪のような肌を抜けるような金髪が隠す。長い睫毛に縁取られた目の奥の瞳は深い海の底のようだ。

少女が人々を釘付けにしていく理由は勿論美しいせいもあるが、通常の人間にはない獣の耳と尾のせいだろう。

「金髪碧眼の半獣だよ!愛玩用に愛でるなんてどうだい、人間ではないのだから、用途は様々、いくらで買うかい?」

男が大きく声を張り上げた。
半獣は一部を除いて、人間に使役される家畜同然の扱いをされる。人並外れた力を持つものは商業を営む者などに飼われ、美しい外見を持つものは貴族の慰み者として飼われる。

飼われているからといって保証はなく、主人に飽きられてしまえば棄てられる運命にある。

少女は、半獣に産まれてしまった、親は極々普通の人間だった。

突然変異だが、獣の耳と尾を持つ我が子を見て笑ったという、

『こいつは高く売れる』

半獣は家畜と見なされるが、言語能力を備えているため、とても高く売れるのだ。

それが、美しく育てば育つほど。

だからこそ両親は大事に育てた。それは子への愛というよりも、豚を肥え太らせる行為と似ていた。

少女は最初から家畜だったのだ。
だから、相手がどんな人間であろうと関係ない。主人と奴隷または家畜、そんなところだ。

そして、少女は自分の美しさを理解していた。だからこそ、今この場にある舐めるような視線の意味を理解していた。
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