愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
和弥…
眼の前に立った和弥が雨に濡れた前髪をかき上げ小さく息を吐く。そんな何気ない姿にまで私の心臓は敏感に反応してしまう。
「もしかして…北沢さんの彼氏?」同期の娘が服の裾を引っ張り上目遣いで聞いてくる。
彼氏…?
一瞬、私の視線が和弥に向いた。和弥がどんな顔をするか見たかったから…
すると彼は、少し俯き私から眼を逸らした。
やっぱりね…そうだよね。私が彼女なんて言われたら迷惑だよね…私は「違うよ」と精一杯の笑顔を作り力無く首を振る。
「新川部長に頼まれて来た」
「龍司に?」
「店まで送る…」
そう言うと和弥は自分のスーツの上着を脱ぎ、その上着を私の頭にスッポリ被せたんだ。
「な、何?」
「濡れるから…」
「いいよ。そんな事したら、和弥が…」
「俺の事はいい。ほら、走るぞ!」
いきなり腕を掴まれ激しい雨の中に引っ張られていく…
「あっ…」
うそ…。和弥が私に触れてくれた…
たったそれだけの事に感激し、彼に掴まれた部分が燃える様に熱くなる。
そして、また私は思い出に浸ってしまう。バレンタインに和弥に告白した時、あの時も和弥はこうやって私の手を引いていれたよね。
嬉しい…と思ってしまうのは、イケナイ事ですか?
―――危うい私の心…