愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

こんな生活がいいとは思ってない。


でも俊に抱かれると、全てを忘れ身を委ねてしまう。彼が欲しいという欲求に負けてしまうの。あの悦びをこの体が知ってしまったから…


「なぁ、真央…この香り…」

「香り?」

「これって、和弥の言ってた真央の甘い香りってやつか?」


和弥が…言ってた…?


「何なの?…それ」


「真央に貸したタオルからいい香りがして、真央からも同じ香りがしたんだって…アイツが前に言ってたよ」

「和弥が…?」


私の頭の中で初めて和弥と話した時の光景が鮮明に蘇り、一瞬、私の意識はあの懐かしい時に戻っていた。


暑いグラウンド。少しテレた和弥の顔…石鹸の香りがした柔らかいタオル…ソレにそっと振りかけた私の香り…


気付いてくれたんだね。…和弥。


久しぶりに和弥の名前を口にし、ほろ苦い想いが胸に広がると、心の一番深い場所に閉じ込めていた和弥への想いが湧き上がってくる。


「どうなんだよ…そうなのか?」

「ち、違うよ…。それは前につけてたやつだから…今のとは、違う」


とっさに嘘をついていた。別に嘘をつく理由など何もなかったのに…
きっと、和弥への想いを完全に断ち切れてない事を俊に悟られるのが怖かったんだと思う。


俊の疑いの眼が私の空言を見透かしているかの様に鋭く突き刺さる。


「俊が嫌なら変えるけど…」

「いや…別に変えなくて…いい」


後ろめたさを隠すように、私は彼の広い胸に顔を埋め本心を悟られない様に下を向く。すると、無言で私を抱き締める俊。でも、その強く苦しいほどの抱擁が私の心を掻き乱す。


微かに震える俊の腕…
私の嘘に気付いているんだと確信する。


俊は私を試しているんだ。和弥の名前を出して私がどんな顔をするか、確かめてる…


怖いほど俊の愛を感じ、自分の罪深い想いを恥じた。


ごめんね…俊…

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