疑惑のグロス
まるで、心臓が二倍に大きくなっているかのような激しい鼓動。
――落ち着いて、苑美。
天を仰ぎ、口をパクパク開いて呼吸を整えながら、途切れ途切れな会話に一生懸命耳を向ける。
「――はい。空けておきます」
はあ?あの女、今、なんて……?
誘いにもったいつけるわけでもなく、あっさりOKした?
ホラ!
ホラ!!
ゆたにはなーんにもわかんないのよ!
大塚はこういう女なのよ!
彼氏がいてもそういうことができる、魔性の女なのよっ!
頬に伝い始めた水の筋に生ぬるい温度を感じ、それが涙だと気付く。
私ったら最近……泣いてばっかり。
こんなに涙流してるのは、人生で初めてだよ。