同期が急に変わったら…。〜将生side〜



いつもより早めに仕事を終えて、





『悪い。今日は先に帰るぞ。お疲れ。』






まだ残業をしている部下達に

そう告げてオフィスを出た。







駅前のコーヒーショップへ

かなりの早足で向かった。






外から見えるコーヒーショップの中に

いずみの姿が見えた。






スマホを触りながら、

一人でテーブルでコーヒーを飲み

俺を待っているいずみ。






そんな姿さえ愛しくなる。






『悪い、待たせた。』

『あ、もう来たの?早いじゃん。』






当たり前だろ。

慌てて来たんだ。






『そうか?行くぞ。』

『うん。』






コーヒーショップを出て、

いずみと話をしながら

街並みを二人で歩く。







時々、

俺を見上げて話すいずみが

なんとも可愛い。






俺は、ただこの時間を楽しんでいた。







少し離れた場所にある

行きつけの和食の料理屋には

時間を感じる事もなく着いた。







ここは、

恵梨香が妊婦というのもあって、

飲み放題より食事をメインにした

落ち着いた店。






鴨鍋のコースは、

4人のお気に入りだ。






『かんぱーい』






乾杯をして飲み始め、

隆也とつい仕事の話で盛り上がり

長々と話し込んでしまった。






隆也がそれに気が付き、

急に話題を変えた。






『いずみ、営業に残れるんだってな。』

『うん、おかげさまで。』

『あのなー、将生なー。』

『おいっ。』






隆也っ!

何を言うつもりだよ?






無言で隆也を睨んでみたが……。

こいつはそれくらいの事で

怯むヤツじゃなかった。






隆也は、ビールを飲みながら





『なんだよ、もういいだろ?

あのな、将生、企画の部長に
かなり粘ったんだぜ。

いずみを自分の
そばに置いておきたくて。

なあ?』






と、俺に振ってくる。






何を言い出すんだ。

口が軽いにも、ほどがある。

許さねぇ。






隆也を思いっきり睨みつけたが、

全く気にしてない様子だ。






これは、飲まなきゃ、やってられねぇ。






俺は、ビールをグビグビと流し込んだ。





『そうなの?』





容赦なく、

いずみまで聞いてくる始末。






勘弁してくれ。






とりあえず、いずみは無視だ。






あー、隆也め。

腹立つ。






『隆也、お前、覚えてろよ。』






結局……、

いずみの異動の件は

詳しく説明させられた。



< 119 / 163 >

この作品をシェア

pagetop