同期が急に変わったら…。〜将生side〜



居酒屋で

久しぶりのいずみとの

飯とアルコール。





ビールジョッキをカチンと合わせて





『お疲れ様。』

『……。』





と、

いつも、笑顔のいずみが一人で言う。






飲み始めて、開口一番。





『で、なんで別れたの?』

『さあな。』





お前と飯に行きたいから別れたんだ、

と言えるわけもなく。





いつもの適当な誤魔化しで対応する。





『また、仕事ばっかりして
デートもしてあげなかったんでしょ?』


『どうかな。』


『まあ、
落ち込んでないでさ、ほら飲んで。』






いずみは

俺のビールジョッキを持ち上げて

飲め飲めと押し付けてくる。






俺が振られた設定か?

こいつ、慰めてるつもりらしい。

まあどーでもいいけど。






俺は、

ジョッキの中の冷えたビールを

口に流し込んだ。






『今日は奢ってあげる。』

『へえ、マジで?』

『うん。なんでも食べて。』

『おう。じゃあ、刺身。』

『はいはい。』







にっこりと笑ういずみ。







モデル並みとは言わないが、

いずみは、

まあまあ美人と言える容姿だ。

スタイルも悪くない。






それと、こいつは笑顔がいい。






いずみが嫌な顔をしたのを

あまり見た事がない。






いつも明るく、

サバサバとした性格。





男であろうが女であろうが、

接する態度は変わらない。






同期の友人として

長く付き合えるヤツだと思っていた。






数年前までは彼氏がいたが、

最近はずっとフリーでいる。






『いずみ。
お前さ、彼氏作んねぇの?』


『はあ〜、彼氏ねぇ。』






いずみは、

ビールを飲みながら

俺を直視する。






『なんだよ?』


『ほら、歳を重ねるとね。
理想が高くなってんのかな?
いいと思う人が、なかなかね。』


『お前が理想とか、言ってる場合か?』


『いいじゃん、ほっといて。』







少し拗ねる素振りを見せて、

俺の取り皿にあった

厚焼き玉子を箸でつまんで食べた。






『おい、それ俺の。』

『もう食べた。』

『お前、ふざけんなよ。』






本当は、全く腹も立っていない。

この時間が楽しいからだ。








こいつといて楽しいと思う、

この感覚。






この時間が欲しくて、

俺は、彼女さえいらなくなった。





………。





いずみ、お前最強だな。





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