儚語り
春は遥か遠く
桜が降る空間は儚く優しく静かな世界。



天女のような儚い出で立ちに、艶やか漆黒の長い髪。



風が吹く度髪が、衣が、花びらが揺れるように揺れる。



花のような笑顔。



『鬼火よかったね』

「何が?」



初音と並んで桜に囲まれた道を歩きながら、そっけなく答える。



『神格、上がったんでしょう?』

「別に嬉しくも何ともない。別に、オレは神になんてなれなくてもいい――おまえと一緒にいられるなら何だっていいんだ」



初音は困ったように笑う。



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