幸せの天秤
本物の愛
携帯を取り出し、電話をする。

「もしもし」

「、、竜崎さん、、、?」

そう、卓真のことを呼ぶのには違和感がある。


「なんで、疑問系なんだよ」

電話越しに鼻で笑う。


「あたし、退院したんだ」

「よかったな」


卓真はあたしの記憶が戻ったって言ったら、喜んでくれる?


「、、竜崎さん、、仕事中でしたか?」

「あぁ」

「、、、ごめんなさい。それだけ言いたかったんで」

あたしは電話を切る。


卓真と話して、こんなに緊張したのは初めてだった。


声を聞いたら、会いたくなった。

卓真に会いたい。


あたしはタクシーを拾い、卓真のマンションに向う。

仕事だって言ってた。

でも、卓真には会ってちゃんと言いたい。


マンションに着き、足早に卓真の部屋に向う。

このドアの向こうに、卓真はいる。

どんな顔をするだろう、、、。

チャイムを押す手が震える。

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