芸術的なカレシ
無神経?






ボーリングにバッティングセンター。
カラオケにビリヤード。

何でもありの1日になった。


嶋田くんはよく笑っていた。
ガーターを出した私を見て。
空振りをする私を見て。
演歌でこぶしをきかせる私を見て。
玉を突けない私を見て。

私も嶋田くんを笑わせたかった。
だからいつもより、ちょっと下手くそにボールを投げたり、調子に乗ってみたりした。


無理矢理にでも笑ってみると、人って案外元気になる。

現に私は元気にしゃぶしゃぶを食べて、クリスマスケーキを平らげて、シャンパンまでご馳走になった。





「今日はありがとう」



外はもう真っ暗。
風が冷たくて、今にも雪が降り出してきそうに寒かった。

マンションの前。
私はボルボから降りて、笑顔で嶋田くんに手を振る。



「こちらこそ、楽しかったよ」



嶋田くんも運転席から私を覗き込んで、笑顔を見せてれた。



「また誘ってもいいかな?」


「もちろん、です」


「連絡するよ」


「はい」


明るく返事をする。
気持ちがまだ、フワフワとしていた。

私の中で蟠っていた悲しみは、体の疲れとともに流れ出してしまったらしい。
嶋田くんの言う通り、モヤモヤしている時には、体を動かすのが一番いいみたいだ。



「じゃあ、また」


「はい、また!」



赤いボルボが闇に消えていくのを、手を振りながら見届ける。
ウィンカーが点滅し、テールランプが消える。

さっぱりした気持ちでポケットに手を入れると、スマホがブルブルと震え出した。
映画館に入る時にマナーモードにしたまま、すっかり忘れてしまっていたのだ。












< 102 / 175 >

この作品をシェア

pagetop