芸術的なカレシ
変身?






赤いソファーがないというだけで、私の部屋は見違えるほシンプルになった。


ソファーと同じようにお気に入りだったタペストリーも、今は何だか生き生きして見える。
ソファーの代わりに、毛足の長いクリーム色のカーペットを敷いた。
それから、グレーのビーズクッション。

そうして、拓が置いていったものは全部、段ボール箱に詰め込んでクローゼットの奥に仕舞い込んだ。
思い出の濃いものも、貰ったものも。
もう使うことのない灰皿や、歯ブラシなどの日用品は思いきって捨てた。
それでも、拓の置き土産は大きな段ボール3箱分にもなった。

全くあの男は、どんだけこの家に馴染んでたんだろう。

荷物を整理しながら、何度か胸が苦しくなって、泣きたくなったりもしたけれど、その度にあのあっけらかんとしたラインを思い出して自分を奮い立たせた。


あんな男のために、センチメンタルになるなんてバカげてる。

私は私らしく、自分の道を行くのだ。
もう、振り回されたくない。
そう何度も繰り返した。



そんなこんなで、無事に新しい年を迎えることができた。


大晦日には母親と二人、お節を作り、恒例のNHK歌番組を見て、そばを食べ。
お正月はお餅にみかん、かまぼこ三昧。

こうくんは実家へ帰っていて、三日の日に一緒に初詣へ行く約束をした。


明日香はフレディと一緒にアメリカへ行っている。
国際結婚は手続きが面倒な上に時間もかかるらしい。
それでも結婚したいのだから、やっぱり二人はお互いに必要し合っているのだろう。
めんどくさがりやな私には、到底無理な話だ。






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