芸術的なカレシ






彼が大きなゴミのようなものや、小さな箱のようなものを触ると、ピーとかドンとかいう音が鳴る。
次々と色んなリズムで、色んな音がどんどん鳴り響いた。
それがいくつにも重なって、不思議な音楽が奏でられる。



「素敵! 素敵!」



紅は一人ではしゃいでいた。
けれど、そのユニークな演奏を聞いているうちに、私も何だか楽しい気分になってきた。

工場から出た廃材や、家電ゴミでできているらしいその楽器は、最後の足掻きのような音楽を精一杯奏でている。

どこがスピーカーになっていて、どんな原理で音が出るんだろう。
ここから見た限りではわからない。
けれど、ボタンが鍵盤のように並んでいたり、車のサイドブレーキのような形をした突起物が震えていたり、見ているだけでも楽しい。



そんなヤスユキさんの演奏が終わると、いよいよ拓とカツオくんの番だった。


照明が落ち、一瞬の静寂が広がる。
暗がりの中で、大きなパネルが二枚運ばれて来るのがうっすらと見えた。
緊張感のある雰囲気に、こっちまでドキドキしてくる。

ドーン、という大きな太鼓音を合図に、パッと会場が明るくなった。


ステージの上には、いつものつなぎを着た拓と、カツオくんの姿。
ドクン、と、私の心臓が跳ねた。







< 160 / 175 >

この作品をシェア

pagetop