芸術的なカレシ
結局?





次の作品は、サンドアートだった。
今、テレビや何かでもよく見かける、所謂、砂絵。

緩やかなピアノ曲が流れて。
大きなスクリーンに、次々と砂の絵が浮かび上がってくる。
器用に動く指。
指から漏れる砂が、人の形や動物の形になる。


私はそのサンドアートをぼんやりと見詰めながら、ほぼ放心状態だった。




……私は、何で拓と別れたんだっけ?


もはや、よく分からない。

拓と紅は、何でもなかったようだ。
キスはしたみたいだけど、紅が言うには一方的だったらしいし。
なら、どうして。
どうして別れなければならなかったんだろう?



「……なんで? 」



声に出してみても、やっぱり分からない。



「……バカみたいじゃない?」



ほんと、バカみたい。

一人で勘違いして、一人で空回りして、色んな人を振り回した。

いっぱい泣いて。
切なくて苦しくて。
母親を頼って。
明日香に背中を押してもらって。
見合いまでして?

だからこそ、こうくんにも出会えたのだけど。
いっぱいいっぱい迷惑をかけた。
心配もかけた。



「バカみたいだわ……」



呟けば呟くほど、滑稽さに笑えてくる。











< 166 / 175 >

この作品をシェア

pagetop