芸術的なカレシ





「もう、あからさまなプッシュはやめてよー、私が結婚したいって言ってるみたいじゃん!」


拓がトイレに立っている隙に母親にそうコソコソ(けれど威圧的に)注意すると、


「あら、結婚したくないの?」


と、母はとぼける。


したいに決まってるじゃん!
だけど露骨な攻めは逆効果なのよ!

そう思ったけど、口にしない。
結局は私と拓の問題なのだ。
母親は母親なりに、思っていることを口にしているだけなのだから。


拓はしょうが焼きを二人前ぺろりと平らげ、ご飯とキャベツをおかわりし、鼻歌混じりでお風呂に入ってから、自転車でアパートへ帰って行った。
泊まっていけば?と提案したけれど、アトリエでやりたい仕事があるらしい。
久しぶりにエッチしたい気分だったけど、仕方がないな。

けど、仕事って、なんだ?
またカツオくんがらみのイベントかな。
厄介事でなければいいけど。



その後、帰宅したらしい拓からのラインで、私の予感が的中したことを知る。


拓史<「今度、カツオとイベントやることになったから
しばらくアトリエこもるわ
でも飯は食いに行くからおばさんによろしくー」


全く、自己中なやつ。


「はいよー、頑張って」


けれど私は、相変わらず健気な返信をする。









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