clover's mind
 就職活動がことごとく不発に終わり、大学にいくほどの頭もお家事情もかんばしくない俺。

 かといって“あるひとつのこと”を除いて、さしてやりたいことがあるわけでもないためとりあえず休養期間などという意味があるようで何一つない日々を送っていた。

 幸いウチの両親は放任主義で口うるさくはいってこないけれど、やはり息子の将来は心配なのだろう時々夕食を食べにきなさいといってくれる。

 高校時代に貯めておいたバイト代でひとり暮らしを始めたものの、結局のところ自立しているとは到底いえない状況だ。

 別に両親に援助してもらってるわけじゃないけどね、内面の問題。

「さて、と。晩飯どうするかな」

 こじんまりとした冷蔵庫を開けて食材の確認をする。

「ふむ……」

 メインになる食材が、ない。

 野菜はあるが肉がない。

 一大事だ。

 野菜炒めをつくれって?

 馬鹿なことをいっちゃいけない。

 それには最低でも“豚コマ”が必要だ。

 なに?

 ひとり暮らしで肉なんて贅沢だって?

 これまた馬鹿なことをいっちゃいけない。

 自慢じゃないが俺は食事にゃうるさいんだ。

 そんなしみったれたおかずじゃ飯がうまく食えやしない。


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