clover's mind
 信じる、というのは言葉にすれば簡単なことだがそれだけでは何一つ叶うものはない。

 俺にだって夢を見、未来を信じて疑わなかった日があった。

 しかしそれにたいして努力をしなかったためにこんな現在がある。

 大概そんなものさ。

「ま、とはいっても──だ」

 時間を垂れ流してぼんやり暮らしていけるほど世の中ってやつはやさしくも甘くもない。

 生きるにゃそれ相応の対価ってやつが必要だ。

 実家で暮らせばそりゃぁ楽。

 間違いなく。

 ただ、俺には今どうしても“やりたいこと”があったんだ。

 それは特別将来を見据えてとか、どでかい夢だとかそういうことじゃぁなく。

 ごくごく衝動的なこと。

 ともかく、だ。

 そのためには一人暮らしをする必要があった。

 世間様からみりゃ俺はどっからみても正真正銘疑う余地なんてこれっぱかりもない“フリーター”。

 けれども俺にとっては他に代えることのできない“大事なモノ”が詰まった場所。

 誰にも侵されることのない“城”といってもいい。

 それは自らが維持をしなけりゃならないってことで、つまりは手前の足で立ち、腕で支えなきゃならないってことだ。

 夢というほどきらびやかなもんじゃない。

 泥くさい、汗くさい、男くさい……って、くさいばっかりだな。

 いやいやともかく、だ。

 自分の足で歩いているという証のようなものが欲しかったのさ。

 一人前でなくても、それでも、少なくとも、自らが選らんだ道だと。

 


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