clover's mind
 移動手段は自転車。

 いずれは車の免許が欲しいが当分はその予定はない。

 金がないから。

 しかし自転車というのは小回りきくしなにより燃料がいらない。

 非常に便利かつ環境にも俺の財布にも優しいヤツだ。

 軽快に土手沿いの道に自転車を走らせる。

 前髪が風で後ろに追いやられ、うなじの髪は幼子に引っ張られるような感覚でなびいていく。

 夏が近いせいだろうか、すでに6時をまわっているはずだが陽はまだ高く土手下のグラウンドではどこぞの少年野球チームが甲高い声をあげながら元気よく練習をしていた。

「ご苦労なこった」

 彼等の中にもあと数年後には俺と同じような状況におちいる者がいるのだろうか。

 今はきっとなにやらすばらしい夢というものを持っていて、それが叶うことを誰よりも信じて疑っていないのだろう。

 神様なんてどこにもいないのに。
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