チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「…なにさ」
静かにあたしを見つめる諭吉。なんだかバカにされてるみたいで無性に腹がたつ。
「見るなよ、バカ」
あたしは呟き、諭吉を全部ゴミ箱に投げ捨てた。そのまま再びシーツにくるまる。
バカだな、あたし。
お金受け取らなかったら、佐倉さんとの関係と何も変わらないじゃん。
ただの不倫じゃん。
視界が歪む。必死に抑えて、枕に顔を埋めた。
…違う、わかってる。
だって高藤さんには、気持ちなんて微塵もない。
先に帰られたって、奥さんの話をされたって、微塵も傷付いたりなんかしない。
佐倉さんだから。
佐倉さんだから、辛いの。
お金なんて関係ない。結局は、全然違う。
佐倉さんと他の人とは、全然違う。
「…会いたい」
会いたい、会いたい、会いたい。
佐倉さんに会いたいよ。
会って、あたしを抱き締めて。
嘘でもいいから、一瞬でもいいから。
亜弥って、呼んでよ。サクラじゃなくて、亜弥って。
亜弥を抱いてよ、佐倉さん。