チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「亜弥」
ふいに背中に声が届く。振り向くと、知恵と春樹がいた。
「これ、うちらからのプレゼント」
知恵が紙袋を差し出した。驚いて言う。
「うそ、まじで?」
「まじで。開けてみてっ」
ドキドキしながら、あたしはその袋から箱を取り出した。
白い箱。ゆっくり蓋を取る。
「わ…可愛い…」
中に収まっていたのは、赤いパンプスだった。手にとってまじまじと眺める。
「亜弥こないだ、赤いの欲しいって言ってたでしょ?奮発して買っちゃったっ」
「言っとくけど、3分の1は俺が出したんだからな」
「何言ってんの、選んだのはあたしでしょ?それはトーゼンッ!!」
二人のいつものやりとりを笑って聞きながら、「ありがと。めっちゃ嬉しい」と呟いた。
オープントゥの赤いパンプス。
サイドには花が咲いていて、ヒールも丁度いい。
満足そうにそれを眺めながら、次に佐倉さんに会うときに履いていこうと決めた。
楽しい仲間。
美味しいケーキ。
優しい友達。
多分あたし、かなり幸せ者だと思う。
赤いパンプスが、春の光に輝いていた。