【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
私は縋りつきながら

嗚咽を漏らしながら

「…ううっ…満君…が…。
私を…裏切っ…たの…。」

と、口にしていた。

その時、氷室部長の肩が

“ピクッ”と震えた。

「……そうか…。
やっぱり…野村さん。」

切なげに私の名前を呼ぶ声が

微かに聞こえた。

「うっ…うっ…うっ…。」


…本当は言いたかった。

呼び止められた時に…。

聞いて欲しかった。

名刺を再び貰った時に…。

相談したかった。

「…うっ…うっ…。」

……泣きたかった。


「…野村さん。」

氷室部長の左手が私の頭に触れて

「…辛かったんだな。
もう、大丈夫だ。俺は味方だよ。」

と、耳元で優しく囁き

優しく頭から背中にかけて

撫でてくれた。

その優しい温度に

さらに涙腺が緩くなった。


しばらくして

氷室部長は撫でていた左手を

私の肩に置くと

「…後で、話を詳しく聞かせて貰う。
寒かったし、腹も減っただろ?
このままでは風邪をひくから
とにかく場所を移動するよ。」

そう言って私のカラダを離すと

ハンカチを出して

私の涙を軽く拭いた。

そして、前かがみになって

落とした私のバッグを拾いあげ

「…悪いけど、持ってて。」

と、私の左手に持たせた。

「….あっ、すいま…。」

せん。と、言う間もなく

「……行くぞ!
足痛そうだけど歩けるか?
車、すぐそこに停めてるから
少しだけ我慢してくれ。」

と、言って

私の右腕を掴んで歩き始めた。


「………!?」

えっ…!?どこへ!?

「…ひ、氷室…ぶ、部長!?」

引っ張られるように歩かされ

戸惑う私に氷室は前を向いたまま

「…いいから…黙って着いて来い!」

とそのまま歩いて行く。

私はそれ以上何も言えずに

引っ張られるまま従った。










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