【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
すると、氷室部長は

「…満君か。」

と呟いた後、私に言い放った。

「…その心配はない。」

「…えっ?」

驚く私に氷室部長は言った。

「野村さんも笠置も
その場を以って別れてる。
笠置が豊島と浮気した。
昔の縁を元に戻そうとしている。
笠置は野村さんと別れるような
発言を仄めかしていたんだろ?」

「…はい。」

「それを聞いて野村さんは
別れを告げたんだから
それは…合意と同じだ…。」

「でも、私は…満君は…。」

まだ私に別れようと面と向かって…。

そう言おうとすると

「…アイツの名前を言うな!!」

氷室部長の苛立ったような声に

私はビクッと震えた。

「…ごめんなさい。」

部長は“しまった”と言う顔をして

「…悪い。そんなつもりじゃなった。
付き合ってたんだから
割り切ってるつもりでも…嫉妬する。」

「…嫉妬…ですか?」

「…ああ。俺もずっと好きだったから。
笠置と付き合っていると
わかっていながらも諦められなくて
…欲しかった。」

氷室部長は切なそうな顔を見せた。

『…好きだった。』

『…欲しかった。』

氷室部長の口から囁かれる愛の言葉。

私は紅くなりそうになる。

さらに追い打ちをかけるかのように

「人を好きになるのに時間も日数も
俺の中では関係ない。
笠置を好きで、付き合っていた過去は
わかっている。
すぐには忘れられないのもわかってる。
だけど、俺はもう我慢出来ないんだ。
君の中に固められていた
“恩人”の枠から俺は卒業したい。
それぐらい好きで、今すぐにでも
野村羽美花が欲しくて堪らない。」

氷室部長はそう言って

私の顎を軽く持ち上げた。

逸らす事の出来ない視線が再び合った。


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