わたしから、プロポーズ
気合いの大仕事
「その久保田さんはね、とにかくうるさい人なのよ。少しでも気に入らないと、ギリギリで担当外しをするし。去年は、それで担当者とケンカになってね。だから、今年はその企業と組めなかったの」
「だから、今年は我が社と?」
そう聞くと、牛島さんは初めてトゲの無い笑顔を浮かべた。
「坂下さんは、知ってるのよね?美咲さんと伊藤課長が元恋人同士だって事」
「はい。知っています」
「だから、今回の仕事が貰えたと思ったでしょ?」
クスクスと笑う牛島さんに、小さく首を横に振るしかなかった。
だって、全く思わなかったと言えば嘘だからだ。
「違うのよ。本当に、交渉の上に成立したものなの。美咲さんは、仕事に関してはストイックだから。だけど、今回はどうしたことか。本当は分かってるんだけどね。今回の坂下さんの担当の件、美咲さんの嫌がらせでしょ?まったく、伊藤課長も断ってくれたらいいのに」
牛島さんは、ため息をついた。
なんだ。知っていたのか。
だから、さっきあんな不満そうな態度を見せたのだ。
それもそのはず。
牛島さんにとっては、私たちの痴話喧嘩に巻き込まれて迷惑なはずだ。
しかも、仕事が絡むのだから、不満を見せるのは当然だと思う。
「すいません•••。私がお受けしたんです。よこしまな考えがないと言えば嘘になるんですけど、このプロジェクトは絶対に成功させたいので」
「そう。だったら頑張りましょう。私は、モデルも観客もみんな大切なの。彼女たちを一番に考えて、やりましょうね」
強く頷いた私に、牛島さんは笑みを浮かべたのだった。
「それはそうと坂下さん。久保田さんは、かなり手強いわよ」