わたしから、プロポーズ


「いえ、あの。これ…」

思わず突き返そうとすると、その人はクスっと笑った。

「マリッジブルーという言葉が聞こえましたので。パンフレットを眺めるだけでも、気分が高まりますよ」

「は、はあ…」

独り言のつもりが、しっかりと聞こえていたらしい。

押し切られ受け取った袋を、半ば無理矢理カバンに詰め込む。

こんな物を、会社に堂々と持ち帰るわけにはいかない。

ズッシリと重くなったカバンを片手に、会社に戻る足取りも、ますます重たくなったのだった。

プロポーズの時に貰った指輪は、家に置いてある。

左手薬指が解放されている事で、何とか気持ちも解放されていた。

まさか、こんな風に思うなんて、自分でも信じられない。

だからといって、瞬爾を失いたくはないし…。

「結婚に、怯んじゃったのかな…」

もう一度ため息を一つつき、会社へと戻ったのだった。

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