わたしから、プロポーズ


「私の誕生日に!?」

思いがけない言葉に、思わず身を乗り出すと、瞬爾に笑われた。

「そうだよ。2月14日。バレンタインに結婚なんて、ロマンチックじゃないか?」

「うん…。とっても…」

私の誕生日に、式を挙げてくれるだなんて、こんな嬉しい事はない。

その話を聞いていたお父さんたちは、満足そうに頷いていた。

そして、それを確認した瞬爾が、機嫌良く言ったのだった。

「だから、式場だけは早めに決めよう。日にちが日にちなだけに、予約が取れないかもしれないもんな?」

「うん!」

今、分かった。

瞬爾が、パンフレットを捨てた事に激怒した意味が。

瞬爾の中では、早く式場を決めたかったのだ。

それなのに、私がパンフレットを捨てたのだから、イライラしても仕方ない。

原因が分かるとホッとする。

「それで、結納は、莉緒の仕事の事もあるから、ある程度まとまったところで、落ち着いてやりたいんだ」

「そういう事なのね。それは、坂下さん方もご納得頂ける事でしょうか?」

瞬爾のお母さんが心配そうに聞くと、元々細かい事は気にしない両親だ。

「うちは構いませんよ。二人に任せます」

と、豪快に笑うだけだった。

「ねえ、瞬爾…。それって、仕事は辞めて欲しいって意味なのよね?」

思い切って聞いてみると、瞬爾は笑顔を崩さず答えたのだった。

「そうだよ」

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