わたしから、プロポーズ


目が覚めると、当たり前にある瞬爾の寝顔。

私はずっと、この寝顔を見てみたいと思っている。

思っているけれど、やっぱり結婚を考えると、足踏みをするのだった。

「あ、おはよう瞬爾」

いつもの朝と同じ様に、軽い朝食を作っていると、瞬爾がベッドルームから起きてきた。

すでにスーツに着替え、小さな笑みを浮かべている。

「おはよう、莉緒。俺は今朝は早く行くから、朝食はいいよ」

「え?もう行くの?」

そんなに急ぎの仕事があっただろうか。

すると、瞬爾は鏡でネクタイを確認すると言ったのだった。

「ああ。今朝は、一番に得意先に行かないといけなくてさ。莉緒と同じ。担当者が変更になる企業があるんだよ」

「そうなんだ…」

それは、本当なのか?

もしかして、私と一緒じゃ気まずくて、早く行こうとしているのではないか。

そんな疑いを持ち、慌てて打ち消した。

もし、そうだとしても私に責める権利はない。

すると、玄関へ向かった瞬爾が、背を向けたまま言ったのだった。

「莉緒、昨日はごめんな。指輪、無理につけなくていいから」

「えっ?」

聞き返す間もなく、ドアは閉まった。

瞬爾は今の言葉を、どんな思いで言ったのか。

切なさが込み上げながら、ダイニングテーブルに戻る。

そして、二人分の朝食を眺めていると、ふと結婚後の毎日を想像してしまった。

きっと毎日こんな感じなのだろう。

朝早くから夜遅くまで、私は一人きり…。

それを考えると、やっぱりたどり着くのが、結婚への足踏みだった。

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