わたしから、プロポーズ


瞬爾が、美咲さんの話をしないという事は、私が寿史さんからその話を聞いたと、まだ知らないからに違いない。

やっぱり私には、話すつもりがないみたいで、もし寿史さんから聞かなければ、ずっと知らないままだったのだ。

「そうだ莉緒、しばらく帰りが遅くなりそうなんだ。F企画との打ち合わせが増えるから。ごめんな」

「あ…、うん」

そうか。

次のファッションショーまでの間、打ち合わせが続くのは当たり前だ。

「誰と?」

「ん?」

「誰と打ち合わせなの?」

思わず聞いてしまった不自然過ぎる質問に、瞬爾は怪訝な顔を向けた。

「誰って、向こうの担当者だけど」

その怪訝な顔を向けられて、我に返った私はぎこちないながらも笑顔を作った。

「そうよね。ごめんね。変な事を聞いちゃった」

気まずい思いでベッドルームへ向かう。

自分の事は棚に上げて、瞬爾の動向を気にするなんて最低だ。

例え、打ち合わせの相手が元カノだって関係ないはず。

瞬爾は仕事だと割り切れる人なのだから。

「って、そうじゃない!だから、何で気にするのかって事よ」

そんなに他の女性の存在が心配なら、瞬爾との結婚を素直に進めればいいのだ。

瞬爾が、最後の相手に選んでくれたのは私なのだから。

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