A-YA-KA-SHI☆バスター!!【Ⅱ】
 本当は分かっているのだ。
 あの戦いの最中、美樹の意識が一瞬、どこか遠くへとんだ。
 アヤカシとリュウが、最後に渾身の衝撃波を放った時、美樹の身体の中に誰かが入ってきたのが分かった。
 あの人は、決してこちらに殺意を持っている訳でもなく。
 何者なのか、美樹には想像も出来なかったが・・・あの人は、ただ、この世界を、傍観しているだけの存在のように思えた。
 明らかに、次元を越えた存在。


「美樹よ」


 その存在は、美樹に話し掛ける。


「やはり、人間とアヤカシは異世界に生きるべきではないかと、我は思うのだ」


 人間とアヤカシは、全く別の世界に生きる者。
 共存するなど、所詮無理があるのだ。


「この世界の理・・・いかなる理由があっても、それを無理に曲げてはならぬ。だがな」


 それは、少しだけ笑って、美樹を見つめた。


「この世界にも、アヤカシの能力を持つ人間がいる。アヤカシにも、人間のような感情を持つ者がいる。これもまた、自然の理」


 美樹は頷く。


「この世に生きるありとあらゆる者を、我は愛でたいと思うのだ。懸命に生きる全ての存在を」


 美樹、と、それはまた、呼び掛けた。


「この世の流れに逆らう事も、この世の理を歪める事も、決してあってはならぬ。だが・・・願うが良い。運命とやらに」
「運命に、願う・・・?」
「そうだ。何の力もない、か弱き存在である人間が唯一、できる事。それが、願うこと・・・」


 願い。
 祈り。
 もう、どれだけ願ったか分からない。
 どれだけ切望したか。
 その存在は、何もかも包み込むような表情で美樹を見つめ、頷いた。
 そして、それはゆっくりと去っていく。

 
「思えば、我が今この時に目覚めたのも、運命かも知れぬな。そしてまた眠りに堕ちよう・・・お前達には想像も出来ない位の、永き時を」


 その言葉を最後に、その存在は、完全にこの世界から消えた。
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