欲しいのに悲しくて
悲しい言葉

『おめでとう』


『幸せにね!』


たくさんの祝福の言葉。

盛大な披露宴、隣には恋い焦がれて仕方なかった今日から旦那さんになる人。


今までの人生できっと一番幸せな1日。


いわゆる社長令嬢な私。

大学を卒業して、当然のように入った父の会社。

そこで上司である彼に一目惚れして、父に取り持ってもらって始まったお付き合い。

優しい彼をどんどん好きになって、周りからも『お似合い』なんて言われて、当たり前のように今日の日を迎えた。


お嬢様扱いがちょっと窮屈な時もあったけど、基本的には何不自由無い人生を送ってきた。


その上頭も良くて、仕事も出来て優しい大好きな人とこの日を迎えられたなんて、これ以上なんて無いくらいの順調さで、不安なんて持つ必要ないはずなのに…



『おめでとう、菜子』

「ありがとうございます。先輩…」



ーーーそのはずなのに、笑顔でお礼の言葉を返しながら、何処か心から笑えない自分が居るの…。










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