滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「あ、あの…部長?」




思わず見惚れてしまった俺に奈緒子さんがどぎまぎしながら声をかける。





ーー俺の頭の中で奈緒子さんがどんなことをされて、
どんな言葉を言わされているかなんて知るはずもないよな。




それを実行したらアンタは俺を軽蔑して、

二度と口も聞いてくれないし二度と笑ってくれない。





そして俺の手の届かない場所へ飛んでいっちまうんだ。








「…何にもないです」






顔に出さない。

言葉にしない。

態度に出さない。



ただひたすら見守るだけの愛が俺には似合ってるんだろうな。






「真壁部長ー、二番に外線入ってますー」

「わかりました、今デスクに戻ります」







だけど、たまには触れてもいいでしょ?

出ないと俺、
干からびて死んじゃうかも。






奈緒子さんから離れる間際に手で軽く肩を叩いただけなのに、


胸が焦げるほど熱くなった。

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