滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

欲張りになってしまうのは、

奈緒子さんへの気持ちが中途半端じゃなくて真剣だから。





アンタには蛍が身を焦がすようなこんな俺の気持ち、


わからねーと思うけど。







ガタッとデスクチェアーから立ち上がり、そのまま奈緒子さんが座る席に向かう。





「夏目さん、チェックOKです。後はよろしくお願いしますね」




先ほどの紙を背後からデスクの上にさりげなく置く。



「は、はい」



俺に気づいた奈緒子さんがそのまま後ろへ振り返り、目を丸くさせたまま俺を上目遣いで見上げてきた。





ーーんとに…、やめてよ。

そうやって可愛い顔で俺を見ないで。




その目も唇も髪も、吐息も目線も、

全部俺のモノだったらーー。
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