滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

ーー見られてた!

じゃもしかして一部始終も…?




ドクンドクンと大きな音を立てる心臓。

嫌な冷や汗が頬をつたり、思わず息を飲んでしまう私。



「相当コキ使われてるんでしょ!?顔に似合わず仕事人間なんだねぇ、真壁さんって」



はぁぁ〜と深いため息をついて、ビールをゴクゴクと飲み干すあずさ。



ーーばれて…なさそうかな?


その後も彼の事を詳しく根掘り葉掘り聞かれたが、
密会の事は深く追求されることはなかった。











「はぁ…びっくりした」


暫くしてあずさと別れた私は、
夜道を一人歩きながら家路へ向かっていた。



「まさか他の人に見られてるとかないよね」




地獄耳のあずさすら知っていたんだから、
もしかして私と彼が会議室でイケナイ事をしてるのを密かに知っている人間がいるかもしれない。



会社自体、社内恋愛は禁止していないものの、
公に公表した人間など、今まで聞いたことが無い。

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