滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

「観光なら俺も一緒に行って…」

「ーーーー結構ですっ!」




彼の一言一言に裏がありそうで、私はとっさに拒否反応を起こした。


ただでさえ見知らぬ土地にいるのに初対面の人と共に行動するなんて、あまりにも無防備過ぎる。





右も左もわからない私を彼は言葉巧みに操って、ひと気のないところに連れて行かれたりなんかされたら、

傷心どころかこの先ずっと傷が出来るような後悔と無念が残るだろう。



「それじゃ!」


私は彼に頭を下げて、足早にその場を立ち去った。


ーー危ない危ない…!

あやうく彼の手のひらに転がされるところだった!



見た目も性格も良さそうだけど、

異国の地で多少なりの警戒心をもっていないと危ない目にあう。


自分を守れるのは自分しかいないんだから…!
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