滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

その他人行儀な口ぶりが更に私の不安を煽る。



蒼は頭に手を置いたまま私をジッと見つめ、
私も負けじとジッと見つめ返した。



「…」



撫でていた手で髪や頬や唇、瞼を優しく触れていく蒼の指先。





目を細めて眺めるその視線は何故か遠い眼差しに見えて、

目の前にいる私の本心を見透かしてしまうようなあの目線ではない。



ずっと黙ったままの蒼に胸騒ぎを感じた私は、
不安を抱えたまま、どうしたの?と恐る恐る声をかけた。





「いやぁ…やっぱ奈緒子さん、好きだなと思って」

「また、そんなこと…」

「出会った時より更に好き度増してる」



イヒヒとあのはにかんだ表情が見れて、
恥ずかしながらも内心ホッとする私。








「でも、もうダメかな」











ーーえ?



蒼の言葉に思わず目を見開いてしまった私。


「ダメ…?」

「あ、何でもないよ〜。独り言」



ぽんぽんと頭を優しく叩くと蒼は立ち上がって、
そろそろ帰るでしょ?と話を切り替えてきた。

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