滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

ーーたまに子供みたいなこと言うんだよなぁ、蒼君。


そういう一面が母性本能をくすぐられるんだけどね。





「じゃ産まれるまで抱きしめてくれないの??」

「んなこと聞くなよなー、愚問だぜ」



フッと鼻で笑った蒼の顔が勝ち誇ったような表情でちょっと悔しい。




「前からじゃなくて、後ろがぎゅってしてあげるんだよ。じゃねーと赤ちゃん苦しくて可哀想でしょ」





ーーちゃんと子供の事を考えてくれるんだ…。



いつもわかってるつもりだけど、
そういうところ、偉いなぁと感じてしまう。


他の同じ世代の子だったらこんなに思いやることしないだろうな。




「ね、今度さ神社行って安産祈願のお守り買ってこようよ!あと帯とか…って聞いてる?」



返事が帰ってこないので見上げると、

蒼はあっという間に夢の中だった。





ーーま、今日一日頑張ったもんね。


ありがとう蒼君、お疲れ様。




私も蒼の体にぴったりとくっつきながら、

そのまま目を閉じて夢の中へ落ちていった。


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