滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

未来に繋がる誕生





時間は止まることなく動き続ける。


一分一秒がその人間の人生を大きく左右させる。






「やべー!!どうか間に合ってくれ!!」



生あるものが新しい希望となって、

この世にやってくる。






「ーー蒼君!」

「おおお、お母さん!奈緒子さんまだっすか!?」




願うのはただ一つ。




「頑張れ…、奈緒子さん」




ドクンドクンと大きく心臓を動かしながら、

今か今かとその誕生を待ちわびる人達。




「頭見えてきたわよ!ほら、頑張って!!」



ずっと育んできた二人の愛の結晶が、

大きく体を動かしながら新しい世界へと進んでいく。



「…っっ!!」




母になる瞬間。




「頑張れ…!」




父になる瞬間。




そしてーーーー。






「ンギャアアッッァアッッ!!」




分娩室に響き渡る大きな産声。





「奈緒子さんっっ!」

「奈緒子!」

「おめでとうございます、男の子ですよ」



その元気な声が
長かった期間を愛おしく思わせてくれた。

< 261 / 262 >

この作品をシェア

pagetop