滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

気配を全く消して突如現れた彼に、私は体をビクつかせて驚き、慌てて振り返った。



「コキ、なんて使ってないですよ。ねぇ、夏目さん?」




ふふふと怪しい笑みを浮かべ私を見下ろす彼に、
思わず顔を赤くしてつい目線を落とす。





「部長、彼女に部長の補佐的な仕事は重荷過ぎるんじゃないですか?毎日残業させるぐらい忙しそうだ」


俊介はハァとため息を尽きながらジロリと彼を流し目で見つめる。




「さぁ?」



しかし彼は俊介の視線に動じる様子もなく、ニコッと満面の笑みで返した。




そのやりとりを間に挟まれた状態で見つめる私は、
何だが居場所がないというか…、居づらいというか。


< 80 / 262 >

この作品をシェア

pagetop